石鹸作りには欠かせないけん化とけん化価ですが、油脂の種類によってけん化価に違いがあります。
その違いと計算方法、また石鹸作りについて解説しますので、是非最後まで読んでいただけますと幸いです。
けん化とは
油脂を水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリで加水分解させ、石鹸(脂肪酸アルカリ塩)を得る方法です。同時にグリセリンも生成されます。
けん化価とは
油脂を構成する脂肪酸の分子量と関係のある値で、油脂1gをけん化するために必要な水酸化カリウム、水酸化ナトリウムの量(mg)を計算する際に必要な値です。計算方法は次の章をご覧ください。
油脂をけん化させる際の計算式
石鹸作りによく使用されるヤシ油(けん化価:約256)を例にとってご紹介します。
ヤシ油1gに対して256mg(けん化価)が必要
ヤシ油100gに対して25.6gの水酸化カリウムが必要
水酸化ナトリウムでけん化させる場合
ヤシ油1gに対して(けん化価×40÷56.1)(mg)が必要
よって、(256×40÷56.1)=183mgとなり、ヤシ油100gに対して18.3gの水酸化ナトリウムが必要
使用するアルカリによって液体もしくは固形石鹸になります。
水酸化カリウムでけん化…液体石鹸
水酸化ナトリウムでけん化…固形石鹸
主な石鹸材料のけん化価一覧
名称 | けん化価 |
---|---|
ヤシ油 | 256 |
パーム核油 | 244 |
パーム油 | 199 |
牛脂 | 196 |
豚脂 | 196 |
アボカドオイル | 190 |
アルガンオイル | 190 |
オリーブオイル | 190 |
米油 | 188 |
セサミオイル | 188 |
シアバター | 165 |
アーモンドオイル | 102 |
ホホバオイル | 95 |
蜜蝋 | 92 |
サンフラワーオイル | 85 |
コールドプロセス製法で作る固形石鹸の作り方
準備するもの
マスク・ゴーグル・エプロン・ゴム手袋・ラップ・型(牛乳パック・シリコン製の型など)
紙コップ・割りばし・ビニール袋(アルカリゴミまとめる)
ステンレススプーン・攪拌棒・ビーカー(ガラス)・ビーカー(ステンレス)
ゴムヘラ・温度計・泡立て器・ミキサー・なべ(冷却用)・氷・はかり
IHヒーター・電子レンジ・保湿箱(発泡スチロール、ダンボールなど)
保湿シート(発砲シート、古いタオルなど)・使い捨てカイロ(冬期の場合)
手順
① エプロン、ゴーグル、マスク、ゴム手袋をする |
② 苛性ソーダを紙コップに、手早く分量どおり量る |
【素手で触らないように注意する】 |
③ 精製水をビーカーで量り、少量ずつ苛性ソーダを加えて溶かす |
④ 氷水をはったボールか鍋に、③のビーカーを入れ、ゆっくりかき混ぜながら冷ます(45℃まで) |
⑤ 冷ましている間に、オイルを計量する |
⑥ ⑤を温めて40~45℃にする |
⑦ ④が45℃になったら、⑥のオイルに少しずつ加え、静かに混ぜる |
⑧ よく混ぜてからミキサーにいれて撹拌する |
【マヨネーズのような鈍く重たい音に変わるまでが目安】 |
⑨ 精油を入れる場合は、この段階で適量を入れ1~2分撹拌する |
【精油は使用するオイル全体の1%前後が一般的】 |
⑩ 型にゴムベラで流し込む |
⑪ 型を持ち上げてトントンと落とし、空気をぬく |
⑫ ラップをして保温シートにくるみ、発砲スチロール等の保温箱にいれ、約24時間保温する |
【冬季はカイロ等で保温するのが良い】 |
⑬ 表面が固まったら保温箱から取り出し、風通しの良い場所で3日~1週間保管する |
⑭ 型と石鹸の間に隙間が出来たら丁寧に石鹸を取り出す |
⑮ 石鹸の表面が固くなるまで2~3日自然乾燥する |
⑯ 全体を触って、ある程度の硬さになっていたら、包丁で好みのサイズに切り分ける |
⑰ 3~4週間、日の当たらない風通しの良い所で乾燥させて完成 |
【手順13以降も、完全に乾くまでは強アルカリなので、ゴム手袋をして作業】 |
後始末
洗う時もゴム手袋をし、専用のスポンジを用意してください。
型に使用した牛乳パックなどの汚れ物はビニール袋に入れて燃えるゴミとして処分してください。
油の違いによる石鹸の出来上がりの特徴
使用する油によって泡立ちや溶けやすさなどが変わります。
しっとり・柔らかく溶けくずれやすい
ベースオイルとしてさらっとしていて使いやすい
石鹸のくずれを防ぐために欠かせない主要材料
起泡性に優れているため石鹸作りには欠かせない主要材料
肌に優しく、しっとりとした洗い上がり
石鹸の泡立ちをよくするために欠かせない主要材料
粘度の高い油で、しっとりとした洗い上がり
今回ご紹介したけん化価は一部であるため、以下の「石けん材料けん化価一覧表」も併せてご参照ください。
石鹸を作る際には是非参考にしていただければ幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。