自然塗料となる乾性油とは
自然塗料とは木の呼吸を妨げず、木材本来の色を引き出す塗料です。
天然の材料が原料となるため、シックハウス症候群の予防にも注目されており安心してお使いいただくことができます。
主に乾性油である塗ると乾く特性のある荏油(えごま油)、亜麻仁油(あまに油)、煮亜麻仁油(ボイル油)、桐油(きり油)が使われ、木材の保護や艶出し、耐久性や撥水性、防虫効果などの利点があります。
荏油(えごま油)
シソ科のエゴマという植物から採れる油で、原産国は主に中国やインドです。
主成分はリノレン酸、リノール酸、オレイン酸で全体の90%を占めます。特にリノレン酸は約60%含まれており、ヨウ素価は193~208の代表的な乾性油です。
木材の保護、艶出しとして使用されている歴史ある油で、耐水性や殺菌効果に優れ、シックハウス症候群の予防にもなります。
昔から日本の木材に用いられており、現在でも古木材や古民家のお手入れにお使いいただける自然塗料としておすすめしております。
気温が下がりますとロウ分が出ますので、濁った感じになります。
亜麻仁油(あまに油)
アマ科の亜麻という植物の種子から採れる油で、原産国は主にアメリカやカナダです。
主成分はリノレン酸、リノール酸、オレイン酸で全体の90%を占めています。特にリノレン酸は約50%含まれており、ヨウ素価は163~190の代表的な乾性油です。
乾燥しますと水・油に不溶な黄色い膜を形成し、洋風の家具、バイオリン、番傘、提灯などに使用されています。
食用のものよりロウ分が多いため、木工用の亜麻仁油(あまに油)は粘度が高くなります。
乾燥時間が長いのが欠点ですが、それを補うために加工された煮亜麻仁油があります。
乾燥すると黄色く変色します。
煮亜麻仁油(ボイル油)
亜麻仁油を真空下300℃近くで加熱したものが煮亜麻仁油(ボイル油)です。
亜麻仁油よりも乾燥が早くなり、耐水性、耐光性、耐アルカリ性が上がります。
煮亜麻仁油は塗料や印刷インキとして使用されています。
桐油
アブラキリという植物の種子から採れる油で、原産国は主に中国です。
主成分は酸素とよく反応するエレオステアリン酸で全体の80%を占めます。
ヨウ素価は160~173と亜麻仁油や荏油と比べて低いものの乾燥速度は乾性油の中でも最も早いと言えます。
粘度が高く、塗りにくいのが欠点ですが、テレピン油などと混ぜると塗りやすくなります。
乾燥すると木材の表面に硬い膜を形成し、防水性、耐久性に優れており、ウッドデッキのような屋外の木材への塗装におすすめです。
桐油には毒性があるものもあり、食べることはできません。
乾性油と半乾性油、不乾性油について
乾性油とは空気に触れるとゆっくり酸化して固まる油で、自然塗料の荏油や亜麻仁油、桐油がこれに当てはまります。
反対に不乾性油とは空気に触れても固まらない油で、食用油に用いられるオリーブオイルや菜種油がこれに当てはまります。
油脂100gに付加することができるヨウ素のg数をヨウ素価といい、乾性油はヨウ素価が130以上のものを指し、不乾性油は100以下のものを指します。ヨウ素価は高ければ高いほど酸素と結びつきやすくなるため、ヨウ素価の高い油は空気に触れると固まりやすいということになります。
乾性油と不乾性油のちょうど中間、ヨウ素価が100から130のものは半乾性油といい、空気に触れて酸化はしますが、完全には固まらない油で、有名な油ではゴマ油が半乾性油に当たります。
不乾性油 (ヨウ素価100以下) | 半乾性油 (ヨウ素価100~130) | 乾性油 (ヨウ素価130以上) |
---|---|---|
オリーブオイル 菜種油 | ゴマ油 | 荏油 亜麻仁油 桐油 |
木材への塗り方(オイルフィニッシュ)
初めて使用される場合は必ず同じ木材の目立たないところで試し塗りをして、色や仕上がりを確認して下さい。
塗装中は十分に換気をしてください。
木材の表面をサンドペーパー(紙ヤスリ)で整えてください。
サンドペーパーの番手は100番から240番を使い、木材の種類によって番手を変えてください。
木材の表面についたゴミやホコリ、サンドペーパーの削りカスなどを綺麗に取り除いてください。
塗る部分と塗らない部分がある場合は、見切り部分にマスキングテープを前もって貼っておいてください。
マスキングテープと木材の表面に隙間ができないよう、しっかり押さえて下さい。
自然塗料はロウ分が多く、粘着性がありますので、油を使う前には容器をよく振って下さい。
そして、古着や古布を切ったウエスに油を染み込ませてください。
ウエスは繊維クズが出ないものをお使いください。
木目に沿って出来る限り途中で止まることなく擦り込むように油を塗り、全体に薄く伸ばして下さい。
基本的に1回塗りで十分な仕上がりになります。
表面に残った余分な油は拭き取って下さい。
油を塗り過ぎると乾きにくくなります。
マスキングテープを取れば終了です。
表面に水分が残ってしまうとシミの原因となりますので、すぐに拭き取って下さい。
使用後のウエスはそのまま放置すると自然発火する恐れがありますので、水に浸けて速やかに処理して下さい。
乾燥時間と塗布面積
塗布時間 畳3枚分(150mlの場合)
乾燥時間は季節によって異なり、松などの油分の多い木によっては乾燥まで時間がかかる場合がございます。
寒い季節は乾燥に時間がかかりますが、暑い季節でも湿気が多い場合は乾燥に時間がかかりますのでご注意ください。
刷毛(ハケ)などを使って塗った場合は厚塗りになる場合がございますので、ウエスで余分な油をふき取って下さい。表面が乾燥していても、木の内部が乾燥していない場合がございます。
テレピン油やリモネンなどを混ぜると内部の乾燥が早まる場合がございます。
酸化防止容器を採用
木工用塗油として用いられる荏油、亜麻仁油、桐油などの乾性油は空気に触れると酸化します。
油の保管・保存中にその酸化を防ぐためには、油が空気に触れることを極力避けなければなりません。
自然塗料の多くは瓶で販売されていますが、開封後は空気に触れる面積が大きくなるため、栓を閉めた状態でも瓶の中の油は徐々に酸化していきます。
乾性油が酸化すると、酸化臭がするだけでなく、フタが固まって開かなくなるなどの不都合も生じます。
このような酸化を防ぐために、乾性油をお買い求めになられる際は酸化を防止する工夫を施した容器の商品を選ばれるのがおすすめです。
当社ではスクイズタイプの容器で酸化を防止しております。
自然塗料に関連した油(オイル)と蝋(ワックス)
クルミ油(ウォールナッツオイル)
クルミの種子から得られる植物油で、原産国は主にアメリカや中国です。
主成分はリノール酸、リノレン酸、オレイン酸で全体の90%を占めます。
特にリノール酸が約60%含まれている半乾性油です。
ヨウ素価は123~166であり、ヨウ素価によっては乾性油になります。
クルミ油は主に食用として使用されていますので、蕎麦(そば)打ち道具の延し棒(麺棒)や延し板のお手入れ、木製のスプーン、お箸、食器類、お子様が舐める可能性のある積み木などの木工製品への塗装におすすめです。
乾燥してから2度塗りなおします。
テレピン油(松根油)
マツ科植物の材またはバルサムを水蒸気蒸留して得られるほかにクラフトパルプ製造の副産物としても得られます。主成分はテルペン系炭化水素です。
無色透明から微黄色の液体で、特異臭があります。
引火点が密閉状態では35℃と低いので注意が必要です。昔はガソリンの代わりに使っていました。
桐油や煮亜麻仁油など粘度のある油に混ぜると塗りやすくなります。
椿油(つばき油)
椿(ヤブツバキ)の種皮を除いた種子から得られる植物油で、原産国は主に日本や韓国です。
主成分はオレイン酸で全体の約85%を占めており、ヨウ素価78~83の不乾性油です。
微黄色から淡黄色の液体で特異な臭いがあります。
空気に触れても固まらない不乾性油のため、その特性を活かして日本刀など文化財の防錆剤、刃物やカンナなどの手入れ油、将棋の駒や将棋盤、碁盤の手入れ油としておすすめです。
蜜蝋(ミツロウ、ビーズワックス)
蜜蝋とはミツバチが巣を作る際に分泌する蝋のことで、原産国は主にアフリカですが世界各国でとれます。
ワックスとはもともとこの蜜蝋のことを指し、古代エジプト(紀元前4200年)ではミイラの保存に、紀元前100年には灯明、5~15世紀には通貨として人の歴史に深く関わってきました。今でも教会のキャンドル(洋ロウソク)として蜜蝋の使用を規定しているところもあります。
特有の乳化性、粘りなどを生かし、化粧品や医薬品によく使用されています。
木材に使用されると、艶出し、防腐作用などの効果があります。
融点は62.8℃です。
イボタ蝋
「いぼた」の木(モクセイ科)に寄生するイボタカイガラムシが分泌する蝋を精製したものです。
桐タンスなどの桐材によく使用され、桐材にはイボタロウというほど相性が良いです。
非常に木材に塗りやすく、柔らかい木材に使用するのがおすすめです。
高級なロウソクの原料のほか、ふすま・障子など建具敷居のすべり剤、碁石の艶出し剤としても用いられます。
融点は80~84℃です。
白蝋(ハゼロウ)
「はぜ」の実の薄い外皮に含まれた中果皮を圧搾あるいは抽出して得られる植物性油脂を木蝋(モクロウ)と言い、その木蝋を晒して漂白したものが白蝋(ハゼロウ)です。
蝋(ロウ)という名前が付いていますが、成分自体は脂肪酸のグリセリドであるため、蝋ではなく油脂の範囲に入ります。
海外でもジャパンワックスの名前でよく知られ、原産国は日本と中国です。
昔から力士の鬢付け油、和ろうそくとして用いられ、木材の艶出しにも用いられます。
融点は52.4℃です。
ライスワックス(米糠蝋)
ライスワックスとは米糠(こめぬか)から油を製造する際に混ざっているロウ分を抽出し精製したもので、国産のワックス資源として最も期待でき、安定供給も見込まれます。
化粧品、みがき剤、キャンディへの練りこみ、塗料用のワックスとして幅広く使用されています。
融点は78℃~83℃です。
最後に
当社は大阪・船場で1946年に創業し、油(オイル)・蝋(ワックス)を商っております。
木工用の塗油につきましても長年にわたり高品質なものを油の専門業者として見極め、皆様におすすめしております。
よろしければ当社オンラインショップ「あぶら屋ヤマケイ」もご覧ください。